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ART@THE CAMPUS #01|SHIMURAbros

THE CAMPUSには、絵画、写真、立体、果てはパブリックファニチャーやロボットまで、実にさまざまなアートが常設展示されています。その時代・その社会を鏡のように映し出す多様な表現に囲まれることで、この場に集う人々の内面から対話を呼び起こし、これからの未来について考え続けていくきっかけとなることを意図しています。この連載コラム「ART@THE CAMPUS」では、そんな施設内に点在するアート作品を少しずつ紹介していきます。第一回はアートユニットSHIMURAbros(シムラブロス)

ART@THE CAMPUS #01|SHIMURAbros|THE CAMPUS|ようこそ、みんなのワーク&ライフ開放区へ

SHIMURAbros「TRACE – SKY – TOKYO STORY 09 (Ed. 1/2)」

北館COMMONSの入り口すぐ、剥き出しの壁面でその作品と出逢うことができます。一見するとルームミラーのようですが、映り込む風景をよく見ると、まるでホログラムのように揺らぎのある色彩を投影しています。それはまるでぽっかり開いた別次元への覗き窓のようで、思わず足を止めて見入ってしまうこともしばしば。その佇まいは、静謐さと戸惑いが同居する心地よい緊張感をこの空間にもたらしてくれます。

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SHIMURAbrosは横浜市出身のユカとケンタロウの姉弟ユニット。映画などの映像表現を活動の主体としており、2014年よりベルリンにある現代美術家オラファー・エリアソンのスタジオでリサーチャーを務めています。この作品「TRACE – SKY – TOKYO STORY 09 (Ed. 1/2)」も、立体でありながら映像を投影する新しい装置として位置づけられており、彼女たちの「映画の表現形式の限界を乗り越える」というアプローチを巧みに具現化したものといえるでしょう。そのインスピレーションの源泉は小津安二郎監督の映画「東京物語」「Googleストリートビュー」にあるといいます。作品の中心に埋め込まれているのは工業製品である電線の断片。ミラーと偏光ガラスに挟まれることで、空間の奥に向かって断続的にどこまでも繋がっていく歪(いびつ)な風景が生み出されています。フィジカルでありながらグリッチ/デジタルエラーのような違和感を生むランドスケープが、観る人の心に新しい情景を映し出します。

 

THE CAMPUSでは、この作品をストリートと屋内の境界線上に設置しています。時間とともに緩やかに変化する風景が交錯し映り込む様は、幻惑的な実験映画のよう。ぜひ実際の作品をご覧いただけたらと思います。

COMMONSは現在コクヨ社員同伴の場合のみご入場いただけます。なお本作品は外からもご覧いただくことができます。

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SHIMURAbros

SHIMURAbrosはユカ(1976年生まれ。多摩美術大学卒後、英国セントラル・セント・マーチンズ大学院にて修士号を取得)とケンタロウ(1979年生まれ。東京工芸大学 映像学科卒)による姉弟ユニットです。平成21年度文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞受賞。その後カンヌ及びベルリン国際映画祭での上映をはじめ、日本国内外の美術館で作品の展示を行い、近年では恵比寿映像祭への出品や、NTU CCA Singaporeのレジデンスプログラム参加など、活動の場をさらに広げています。2017年にはArtReview Asia誌のA Future Greatsに選ばれました。平成26年度ポーラ美術振興財団在外研究助成を得て拠点をベルリンに移し、現在はオラファー・エリアソンのスタジオに研究員として在籍し活動しています。